玉三郎
1昨年からずっと月に1度は歌舞伎鑑賞に通っている。これも自由業の特権。会社員時代はとてもそんな気持ちのゆとりはなかったな。
そんなわけで、テレビで歌舞伎のことを扱っているとつい見入ってしまう。先日は玉三郎の仕事ぶりを追ったドキュメンタリーを見た。
玉三郎は舞台生活50年だという。そうだよね。私の学生時代にはすでにたいへんな人気だったもの。その頃の初々しさはないものの、相変わらず玉三郎は美しい。「奇跡の美貌」とテレビでは言っていたが、ほんとうにそうだ。舞台で見るとひときわあでやかで華がある。
だが、その玉三郎、実は子どもの頃から病弱で、「舞台に立てる身体ではない」と自分で思っていたそうだ。だから、舞台を続けるためにすべてを犠牲にしている。舞台が開く1時間半前(歌舞伎座だったらだいたい9時半頃)に到着し、準備に入る。それから舞台を努める。終わるのは9時過ぎだから、それから着替えて家に着くのはおそらく10時過ぎ。それからマッサージを受け、その日の疲れを取ってそのまま眠る。
舞台の間は飲み会には出ない。舞台初日の討ち入りの飲み会すら付き合うことはしないし、声を痛めることを恐れて電話すらろくにしない。舞台のある間はずっとそうだというから、これは人付き合いを放棄するのに等しい。趣味も娯楽もない。ただただ舞台のためだけの日常。
玉三郎は言う。
「いつ舞台に立てなくなるかわからない。だから先のことは考えない。ただ明日のことだけ。それをずっと続けてきたら50年経ってしまった」
舞台での演技の素晴らしさと、いつまでも衰えぬ清冽な美貌と、それらに対する評価が玉三郎の努力への褒賞だとしても、人としての幸せはそこにない。
恵まれた容姿でもなければ踊りや演技の天分でもない。すべてを芸に捧げきるその集中力こそ、才能というんだよな、と玉三郎の眼差しの静けさに打たれながら考えたことである。
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コメント
ちょっと前、玉三郎さんがフリーダイビングを趣味としているという番組がありました。
少ない休暇の中、やはり玉三郎は集中して、遊んでいました。
何事にも、集中力が凄いんですね。
博多座で玉三郎の藤娘を見ました。なぜか泣けました。
投稿 ちょいぎれおやぢ | 2008年1月18日 (金) 00時52分
玉三郎さんは年間500舞台こなしているそうです。それ以外にもいろいろ仕事はあるでしょうから、オフなんてほんとに少ないでしょうね。他人事ながら、そういう時はほんとに楽しんでほしいな、と思っちゃいますね。
舞台で見せる凛とした美しさは、ストイックな生活のたまものなんだな、と思いました。
投稿 碧野 | 2008年1月18日 (金) 09時29分